見守りセンサー 転倒防ぐ

2026年(令和8年)1月16日(金曜日) 日経★12版 社会 34

介護事故と向き合う

見守りセンサー 転倒防ぐ

施設で導入格差、費用が壁

介護現場でICT(情報通信技術)を活用して事故を減らす取り組みが進んでいる。ベッドからの転落や起き上がる際の転倒を防ぐ「見守りセンサー」を導入する入所型施設は7割を超えた。採用後に事故ゼロを実現した施設がある一方で、高いコストや操作の難しさが導入の壁になっているとの指摘がある。

「(入居者が)起き上がったことを通知します」。昨年12月の深夜、特別養護老人ホーム「ささづ苑かすが」(富山市)の職員、江尻勇輝さん(43)の無線インカムに音声が流れた。居室で寝ていた89歳女性がベッドから起き上がろうとしている知らせだ。

江尻さんは女性の部屋に向かい、車椅子に移るのを手伝った。女性は足腰が弱く、何度も転倒しているが危険を回避することができた。

施設を運営する社会福祉法人おおさわの福祉会が導入したのはベッドのマットレス下に敷くシート型の見守りセンサー。体の動きや心拍数などを記録する機能があり、起き上がりなどを検知すると職員のインカムや端末に知らせる。江尻さんは「数日に1度は起きていた夜間の転倒がほぼゼロになった」と話す。

費用は1台約10万円。富山県の補助金を利用し自己負担を3割弱に抑えた。「夜間巡回も減り、利用者と職員の双方にメリットがある」と岩井広ト施設長は語る。

居室内にカメラを導入したのは介護老人保健施設「リハビリゾートわかたけ」(横浜市)。2023年に全床にカメラを設けた。職員は事務所のパソコン画面で居室内の映像を見守るほか、スマートフォンでも居室の様子が見守れるという。

22年前半だけで10件以上あった事故は25年の同時期は1件に減った。社会福祉法人若竹大寿会の山岡悦子副本部長は「職員の安心感にもつながっている」と話す。

介護労働安定センターの24年度「介護労働実態調査」によると、全国の入所型介護施設のセンサー導入率はベッド型が70.1%、カメラ型の導入率は13.7%。いずれも増加傾向にあるが、SOMPOリスクマネジメントの泉泰子プロフェッショナルは「地域や施設規模によってばらつきがある」と話す。

要因の一つはコストの高さだ。同じ調査では施設の64.8%が「導入コストが高い」を課題に挙げた。全国老人福祉施設協議会(老施協)の里村浩常務理事は「自治体の補助金は県知事らの意向に左右されやすく、地域格差が大きい」と語る。

操作の難しさが導入の壁になる場合もある。同調査では「現場職員が技術的に使いこなせない可能性がある」が36.5%に上った。

厚労省の試算では介護職員数は40年度に57万人分が不足する。機器の活用は状況を打開するカギとなる。国や自治体による支援が欠かせない。


【図表:見守りセンサーの利用状況は施設によって差がある】 ※グラフの数値(2024年度「介護労働実態調査」より)

  • 入所型
    • ベッド型:70.1%
    • カメラ型:13.7%
    • その他(床やドアなどに設置するもの):14.5%
  • 通所型
    • ベッド型:4.5%
    • カメラ型:5.6%
    • その他:9.6%

(注)介護労働安定センター「2024年度 介護労働実態調査」から作成

エフエージェイの離床・転倒・徘徊センサー

株式会社エフエージェイが提供する「離床・転倒・徘徊センサー」は、レーザー光で物体を計測するLiDAR(ライダー)技術を活用した非接触型の見守りシステムです。

主な特徴と機能は以下の通りです。

1. 独自の検知仕組み(LiDAR技術)

  • 360度監視: ベッドの下に設置したセンサーがレーザー光を360度照射し、室内の物体までの距離や方向を測定します。

  • 高い検知精度: 床上約5cmの高さで水平スキャンを行い、足などの細い部分も高速で検出します。

  • プライバシーの保護: カメラを使用しないため、入居者のプライバシーを守りながら見守りが可能です。

2. 主な検知機能

人の動きの起点(ベッドサイドか入り口か)によって、介護スタッフか入居者かを自動で判別し、誤検知を防ぐ工夫がされています。

  • 離床: ベッドから降りたことを判定します。

  • 転倒: 座り込んだり、寝転んだりする動作(足よりも大きなものの出現)を検出して判定します。

  • 徘徊: 部屋の外に出たことを判定します。

3. 導入・運用メリット

  • 工事不要: ベッドの下に置くだけで設置が完了するため、配線工事や壁面・天井への固定が不要です。

  • Wi-Fi不要: 長距離無線通信(LoRa)を内蔵しており、施設全体をカバーする安定した通信が可能です。

  • 一括管理: 1台のセンター装置で最大40部屋までの状況を液晶モニターとチャイム音で通知・管理できます。

  • 夜間自動運転: 離床等の監視は主に夜間のみ自動で行われる設定となっており、効率的な運用をサポートします。

4. 費用目安

  • 製品価格: 離床・転倒・徘徊センサーは50,000円 最大40台

  • モニターは50,000円  センサー最大接続台数40台